続6 両手 掴み取る何か

 2007-06-19投稿
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自分に向ける刄と片寄った欲求にバランスが取れなくなったあたしは一番手軽でさして不安もない多数の男に走った。
愛するなんて愛されたことないからわからない、甘え方も知らず若さ故に群がる男達のただ一時の肌の温もりがあたしの信じられる唯一現実だった。
心底好きということがわからなかった。
「何故だ」「他にいたのか」「俺じゃないんだな」
あたしは誰かひとりなんて言ってない、みんな優しい人であの時はあたしを必要としてくれた。
必要としてくれることだけ、温もりだけが嬉しい。気持ちよくもないし演技は覚えてそれだけだった。
心の奥底の冷たい塊はいつになっても溶けることなく気持ち悪いくらいに今も重い。
いつからか夕暮れになり無数の窓に灯がつくと、そのなかで妻がアイロンをかけたワイシャツをきた旦那が浮気をし、子供が無邪気に笑い、それぞれの灯を見る度にあたしは吐くようになった。

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