ヤス#78
純子は見えなくなった目を見開き、ヤスの背中を抱きしめた。悲しみと歓喜。涙が筋となって目尻から零れていく。
涙は敷き詰められた南竹の葉を黄金色に染め始めた。その輝きは小さな波紋となって外へと広がっていく。
純子は残された力を振り絞り、ヤスを深く迎えた。時折、ヤスの動きに合わせ、体が宙に浮く。
｢母さん、どうだ！気をやれそうか！｣
｢ううっ…ああ…ヤス…私は…いつでも｣
｢くそっ！まだ続けるかぁ！ヤスよ、お前を我々の世界に連れて行くのは止めだ。このまま、ここで死んでもらうぞ！…抱き合ったまま死ぬが良い！それも、至極の喜びだろう…もろとも、海のモクズとなるが良いわっ！…死ねっ！｣
更に太い鞭と化したシットの髪が、ユウキの枝を粉ごなにしながら二人に向かって打ち下ろされた。
｢ヤス！死ねっ！死んでしまえ！ぬあーーーっ！｣
｢バキバキ！バシィ！バシィ！｣
太い鞭が、二人を襲った。
ヤスの背中からはうっすらと白い骨が覗いている。純子の脇腹が裂け、鮮血が飛び散った。だが、ヤスはそれでもなお、愛の行為を止めようとはしなかった。
ヤスは意識が遠のく中、脳裏に遠い過去が蘇ってきた。
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