続7 両手 掴み取る何か

 2007-06-20投稿
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無償の愛は知らないがあたしは近しい人の死に際にあって自分のなかにそれに近いものがあることを知る。義母が踏み殺したインコは目から血を流しながらあたしを見て口ばしは泡だらけだった。
あたしの目からこれでもかという程、泪の粒が転がり出てあのフアフアな小さな体に必死にマッサージをしながら強く願った。
「もし神様がいるならあたしの命をこの子にやって」「あたしは今死んでもいい」
祖母と言われた人はいつもあたしを不敏がった。その人はあたしに優しかった。でも全身に転移した末期癌で苦痛で鬼のような顔で最後を迎える時も、親友が車に排気ガス引き込んで自殺をした直後の車窓のガムテープ必死で剥がした後でも同じことを願った。
誰かから死なないで生きていてと思われている人は死んじゃいけない。
世界中には生きたくても環境や病気で生きられない人がたくさんいる。
殴り倒され頭が陥没しても首を絞められても生きているあたしをあたしは許さない。神様なんていない。
あたしの腹には自分で立てた包丁の後がある。
二の腕と太股の裏には数えきれないヤキ痕がある。
死のうなんていつも思う。あたしのせいだといつも思う。包丁の脇から内臓が血と共に動めき出すようなことをしても死ねないあたしは包丁を握る力と同じ位に誰かを優しく包むことをこの両手でしなくちゃいけない。
あたしのように悲しむ人はいらない。
バランスを失ったあたしはそれを暴力を振るわないあたしを投げ出さない男、誰でもいい結婚に求め身籠った。

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