思わず言葉に詰まる。
「あー・・・彼女はちょっと・・・具合が悪くて今日は来れないんですよ」
できれば彼女のことは触れてほしくない。
「そっかあ・・・明日も来るって言ってたのに・・・」
俯いたゼンくんは少し寂しそうだった。
「お兄さん!!」
突然ゼン君が大声を出して、僕はすごく驚いた。
「どうしました?」
あんまり大声を出すと体に障るだろう。
「お姉さん・・・病気ならお見舞いに行かなきゃ!」
病気じゃないんだけどな、と心の中でつっこんだ。
「僕なんかと話してないで、お姉さんのとこに行きなよ!!」
「はあ?」
阿呆みたいな声が出た。
子供は本当に残酷だ。
「今日は、用が、あるんです」
一言ずつ噛み締めるように言う。
そう、用があるんだ。
「そっか・・・お姉さん、大丈夫かなあ」
ゼンくんがまた俯いた。
きっと自分が行きたいんだろうな。
それなのに僕は・・・
今日ぐらい、いいよな。これで、最後にすれば、いいよな。
「ゼンくん。僕の用事・・・大丈夫そうだから、僕お見舞い行きますよ。・・・何か伝えたいことありますか?」
これで最後。
これで、やめよう。
僕に恋する資格なんてないんだから。
「あっ!じゃあ手紙書くから、ちょっと待って!!」
そういうとゼンくんは、ベッドの脇に備え付けてある紙に何か書き始めた。
ゼン君の手紙を持って歩く僕の心は、少し踊っていた。