あんなに輝いていた太陽は、姿を雲で隠してしまっている。
なんとなく、イヤな予感がした。夏だから、夕立くらい降るかもしれない。普通の現象なのに、なんで、胸が高鳴るんだろう。
｢バアちゃん、気をつけてね？なんか、イヤな予感がするんだ｣
バアちゃんは、笑って頷いた。そして、｢ありがとう｣と、言った。バアちゃんは立ち上がり、台所のほうに行った。
ボクは、窓から見える暗雲を眺めていた。雲は、どんどん膨らんでいき、形を成していった。その形は、なんとなく龍に似ている。灰色の龍は、目に見えない目で、ボクを見つめている。ボクの方に顔を向けてはいないけど、見られている気がする。
雲の龍と対峙して、５分。バアちゃんが西瓜を持って、部屋に入ってきた。雲の龍は、形を変えて何にも似ていないものに変わった。ずっと見ていたら、負けていたかもしれない。バアちゃんが来てくれなかったら、精神的に負けていたかもしれない。
｢克、西瓜持ってきたよ。食べよ｣
ボクは、｢うん｣と言って西瓜を手に取った。西瓜はよく冷えていた。噛り付くと、甘い香りが口中に広がった。
その日の夕方、ついに雨が降ってきた。バアちゃんは慌てて、洗濯物を中に取り入れた。ボクは空を見た。続
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