あまりのことにその場に座り込む。
「なによ…、これ…。」 声に出せたのはこれだけであった。なんなんだこれはなんで、ここはどこ。ありきたりな問しか頭に浮かばず、葵はただ、色素の薄い琥珀色の瞳で、ときたま鳥が鳴くだけの静かな空を呆然と眺め続けていた。
確か自分は学校帰りに古本屋に寄った。そこで中古の文庫を3冊買って、近くのバス停の粗末なベンチに本を読むために腰掛けた。そこまでは覚えている。だが逆にそこからの記憶が一切ない。考えても出てこないどうしようもない。だから震える唇でため息をひとつつくと、震える膝を叩いて叱咤して立ち上がる。こうしていても始まらない。だからとりあえず、あたりに散らばった私物を拾うことにした。