「ここ、こんなにいい部屋なのに家賃安いね?」
アパートの中を見渡した。ちょっとボロイけど広くて普通にいいアパートだ。
「訳ありの部屋だからねぇ。あんまり勧めないよ。」
大家のおばさんは気味悪げに部屋を案内してくれた。
「訳あり?ひょっとして幽霊とかそんなの?」
「ん〜まぁ。そうだね。」
「へぇ〜おばさん幽霊とか居ると思うの?」
「居るとは思わないけど近所の噂とか、前の住人からの相談があったりとか信じないわけにもいかないのよね。」
「ふーん。でも、ここから大学近いし、家賃が安いのが最高だし。それに幽霊なんて居る訳がないんだしさぁ〜!
俺、この部屋借りますよ!」
「…そうかい?無事を祈るよ…」
俺は大学生。
やっと親から離れて自立した。
そして自立して無駄遣いできない俺には安い家賃の部屋は有り難かった。
たとえ訳ありという部屋でも。
「ふぅ〜、やっと荷物の整理が出来た。」
煙草をふかしながら部屋を見渡す。
広い部屋に安い家賃で得した気分になった。
「そうだ。要らないもん押し入れの上の段の棚に仕舞っとこ。」
リビングの隣には和室があって大きな押し入れがある。
そして押し入れの上にはまた一際、小さい棚のようなスペースがあった。