好きだったし、付き合ってたって事は…。
「過去の事なんだ。俺、言ったよね、あの日…」
水嶋君の茶髪が揺れて、私は見とれるかのように、じっと見つめる。
「一緒にいて欲しい。…俺が今、一緒にいたいのは、水城ちゃんなんだよ」
そうだ、彼女って言葉をくれたのも水嶋君。
何で疑ったりしたんだろう。
彼を抱き締めたいと思った。
「好き…、水嶋君が好き」
私が駆け寄って、彼もそれに答えるかのように強く抱き締めてくれた。
いいんだ。過去に誰を想っていても、誰と付き合っていても…。
今、あなたがここに居てくれるなら、それでいい。
遠くでセミの鳴く声がする。
暑い日差しの中、汗の染み付いたシャツの感触さえ、愛しいと思えた―。
「あ…!」
別れ際、ハッと思い出して、口にする。
「どうしたの?」
キョトンとする水嶋君。
そうだよ!
「私、水嶋君のお母さんに会った事ない」
「えっ!?」
突然何事かと言う感じで驚いて、
「会いたい…?」
覗き込むように聞き返した。
「ずるい、千里ちゃんは知ってるのに…」
「ははっ!」
って何か笑ってる。
「わかった、今度会わすね☆」
そう言っていつもの笑顔を見せた。