8月11日
午前6時
敬介は目を覚ました。
狭い車の中で寝たせいか体中が寝違えて痛い。
やはり寝ずに岩手まで行くのは無理があるので昨夜は高速のパーキングエリアで一夜を過ごした。
敬介がこれからしようとしている事。
それは10年前の忌まわしき記憶と10年間の憎しみにピリオドを打つ事。
敬介に孤独と悲しみそして父と母の命を奪去ったあの少女に復讐する事だ。
『その時が来たらあなたは…私のものよ…』
あの日彼女が言った『その時』
それはまさに今日の事を指し示しているに違いないと敬介は感じた。
感覚的に奴が自分を手招きしている、と。
彼女がいるという証拠や確証は無い。
しかし敬介には証拠や確証以上に彼女の執拗な執着心の様なものを感じていた。
敬介は車から降りてトランクを開けた。
ボストンバックのチャックを開ける。
中には朝食用の10チャージでお馴染みのゼリー飲料と、爽やかな高原の朝日に照らされて輝く刃渡り30センチの包丁があった。
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