らぶふぁんとむ20.6

あこん  2007-06-24投稿
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『恵一ー、飲み会行かないのー?』
電話の相手は孝太。大学仲間との飲みに誘われていたのだが、今日だけは無理だった。
「すまん、今年の今日だけは。」
四月の始め。
珠美の小学校の入学式だ。

「恵一、あんたに関係無いでしょう珠美ちゃんの入学式は。」
母が呆れた目で恵一を見る。
「そうもいかないだろ、ご馳走作る、て約束しちゃったんだから。」
言いながら恵一は冷蔵庫を開ける。
「どんだけだこの家は。なんで中年が二人住んでるだけで牛乳が三本も入ってるんだよ。」
「安かったからつい。」
「買ったなら責任持って使えよな…ギリギリだな。ふむ、シチューかグラタンか、生クリーム足してクリームソースのパスタもありだな。」
冷蔵庫を物色していると、小野瀬家の玄関が開いた。
「恵お兄ちゃーん、私もう行くよー?」
珠美が入ってくる。いつの間にか小野瀬家フリーパスのようだ。
「おおぅ、もうそんな時間か。」
「…恵一、あんた本当に式に出るつもりかい。」
「だっておばさん!お兄ちゃんは私の旦那様ですから!」
「…恵一、こんな小さな子に。」
「俺は何もしてない!」
冷たい目の母に必死で抗弁する。
「えぇい、時間が無い。下拵えは帰って来てからだな。…チーズが大量にあるしグラタンで、マカロニは帰りに買ってくるか。鶏肉も溶けてるし…。」
「行ってきまーす。」
ぶつぶつと呟く恵一を引っ張って、珠美は笑顔で小野瀬家を後にする。
余談だが、親以上に過保護な恵一に、牧江とその夫は苦笑しっ放しだった。

「そら、俺お手製のグラタンだ。」
大皿に入ったグラタンはチーズの焦げる香ばしい匂いと共に珠美の目の前へ運ばれる。
「相変わらず上手ね恵ちゃんは。」
牧江その他も感心している。
「いただきまーす!」
「熱いから気をつけてな。」
小皿に取ったグラタンを、珠美は口に入れた。
「…おいっしー!?」
喜々とした目で珠美は叫ぶ。
「あら、ホントに美味しい。」
その他も口を付ける。
「そりゃよかった。沢山食ってくれ。」
恵一の後ろには同サイズの大皿が二枚並んでいる。
更に鍋には大量にホワイトソースが入っている。
「ちなみに明日の晩飯はクリームパスタだ。」
「食べに来るー!」
珠美はフォークを高々と掲げた。



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