「あの…結城さん…」
私は小さい声で言った。
「何?優ちゃん」
結城さんは笑顔で答えた。「あの…私のお母さんはどうしたんですか…?」
「う〜ん……今言っても信じてもらえないと思うからまた後でね」
私のお母さんは、さっき見た時、お母さんじゃなかった。お母さんはあんなに恐い顔はしない。
「ねぇ、優ちゃん。お父さんは?」
結城さんはまた笑顔で聞いてきた。
「まだ仕事……」
お父さんは医者で勤務時間がバラバラだから、いつ帰ってくるかわからない。
だから殆ど晩ご飯はお母さんと一緒だ……
お母さん……
「なんのお仕事?」
「医者……」
「医者かぁ…。じゃあ帰ってくる時間とか分からないよねぇ…?」
コクリと頷く。
「分かったよ。ありがと」結城さんは、明るく笑いながらお礼を言った。
「おっと、着いたよ」
顔を上げると、近所にあるずっと建設中のマンションの中に入って行くところだった。
こんな所で何をするんだろう。
「あの…ここは…?」
結城さんの方を見て聞いた「ここ?ここはね、あたし達の…」
悩んだような顔をしてから「秘密基地みたいなものかな!ちょっと違うけど」
結城さんは笑っていた。