『パァン…』
銃声が響く…
狙いは外れた。
そう頭の中で認識した少女がいた。
「あれ?ムツキぃ、外れたぞォ。どうかしたかァ?」
頭越しにクレー射撃の講師がムツキと呼んだ少女に話しかける。
「…」
少女は黙る。
「いつも百発百中なのに…」
「…」
さらに黙る。
「具合悪いかァ?」
ドガシャ!
少女は射撃スクールで一番重いライフルを叩きつけて言った。
「軽い…こんなの使えないわ…」
そしてツカツカとスクールを出ていく。
ムツキは中学2年生、
頭が切れ、その小さな体つきからは思えない怪力を持つ少女だ。
友達も作らず、目立とうともしない。
クレー射撃の腕前は世界大会にも行ける程だが、彼女は試合を避ける。
『つまらない』からだ。何をやっても一番と分かるからだ。
「退屈…」
ヘッドホンから流れる音楽を聞いて家に帰る。
「退屈…」
家はまだ先だ。
「退屈…」
音楽の音が大きいので音楽しか聞こえない。
「退屈…」
「お嬢さん、退屈と4回言ったねェ…」
バッと横を見ると、赤いローブの女がいた。
「おかしい」
ムツキは思った。
「音楽で何も聴こえないのに、なんでこの人の声は聞こえるの?」
女は微笑している…