不変 ?

 2007-06-25投稿
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冬子は驚く風でもなく返事を返した。

「そんな暇ない。そっちは?」
「俺も」

冬子は疲れを隠すように笑った。
だが直之は見抜いていた。
この一年で冬子が相当疲れてしまっていることに。

坂を下りきると、直之の自転車だけが夜風に吹かれていた。
直之はサドルに、冬子は後ろの荷台に座った。
冬子の両手は荷台を軽く握って、走り出した自転車の速度に振り落とされないようにしていた。と言っても、直之はさほど速度を上げず自転車を漕いでいた。

「冬子。キツかったら帰ってこいよ」

「うん」

短い返事だったが、冬子の声は震えていた。

「キツくないけど・・・・・ちょっと・・・疲れたかな」

ぽつりとつぶやいただけの言葉が、せき止めていたものを溢れさせた。
涙が溢れて止まらなくなってしまった。

「冬子?」

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