神殿の更に奥には、巫女や神官、神殿の関係者以外、立ち入ることはできなかった。
「神官長が姫に会いたがってますよ。最近、いらっしゃる回数も少なかったですから」
マキは苦笑して言った。
「タリア神官長が?」
その言葉にウリューゼアも苦笑で返した。
その時、神殿の奥の一室から突然図ったように髪の長い青年が踊り出てきた。
「姫、良くいらっしゃいました!
神官長たる、このタリアが精魂込めて磨きあげたこの……って、聴いてくれてます?」
高い天井を見上げてうんざりしている、ウリューゼアを見咎めて、神官長は聞いた。
「貴方の前口上は聞き飽きたわ。
それより、できてるの、タリア神官長?」
ウリューゼアは神官長の話を打ち切って聞いた。
「勿論、できておりますよ。姫の命と共にする宝剣、紅き涙」
神官長はウリューゼアに向き直って答えた。
そして、部屋の奥から大事そうに掲げてウリューゼアに差し出したのだった。
「ありがとう、神官長殿」
ウリューゼアは身体の一部が返ってきたかのように抱きしめた。
「今回打ち直した事で、真実貴女様の物となりました」
神官長は真剣なまなざしで剣とウリューゼアを見つめた。