拓也は、おとなしく神谷の言う通りにした。
春香は、神谷にこう言った。
「とりあえず、お礼言わんとな。神谷君、ありがとう。ほんで、ちょっと聞きたいんやけど、なんで、私は神谷君と話しても倒れへんの?」
「それは、あなたの心は子どもでも、体が大人だからです。いわば、体力の問題です。お分かりいただけましたか?」
春香は、頷いた。今の話は分かりやすかった。そして、もう一つ疑問に思ったことを、春香は口にした。
「神谷君は、拓也に何の用があるん?使者の目的って言うたら、何かを伝えに来たんやろ?そやのに、今はまだいいです、とか言うて先延ばしにしようとすんの?」
「春香さん、ごもっともですね。しかし、今はまだいいんです。その時になったら、しっかりとお伝えします。それに、拓也君と話しても、また倒れてしまいますからね。質問に答えてませんが許してください」
そう言って、神谷は帰ろうとした。春香は、神谷の前に立ちはだかり、こう言った。
「伝えなあかん時期はまだ先やのに、なんで今、拓也に会いに来たん?それに、伝える事はいい話なん?悪い話なん?」
この春香の質問には答えず、微笑んだままだった。そして、失礼、と言って、春香を擦り抜けて、出て行った。続