目的地には夏休みと言うこともあってだろう、結構な人がいた。
あちらこちらで露店も出てる。
私は水嶋君と、海辺へ向かった。
「水着持って来た?」
水嶋君の問い掛けに頷く。「うん、下に着て来た…」
答えながら後ろが騒がしいのに気付く…。
「やめて下さい!」
振り返ると日傘をさした女の子が二人組の男に絡まれてる。
「いいじゃん、一人でしょ?」
「やだっ!放してっ」
女の子が腕を掴まれて嫌がってると、もう一人の男が「やだっ!だって、可愛い〜♪」とからかった。
ちょっと!…と言い掛けて、足を踏み出した私を水嶋君が止めた。
彼が二人組に近づいていく。
「嫌がってるじゃん。放してやれよ」
「ああん!?」
彼の言葉に二人組が威嚇して、女の子もおそるおそると言った感じで振り向いた。
「ちぃちゃん…!」
水嶋君が声をあげる。
千里ちゃん…!?
さっきまで傘で隠れていた顔。
紛れもない千里ちゃん本人だった。
「碧〜!」
千里ちゃんが泣きそうな声を出して彼に抱きつく。
それを見た二人組は「んだよ、知り合いかよ!」と吐き捨てると、舌打ちをして去って行った。
何で千里ちゃんがここにいるの―?
私の中で黒い渦が巻く…。