とある県境の寂れた山沿いの村に、その事務所はあった。
事務所といっても、元は無人の民家で、築40年の珍しいぐらいのぼろ屋、今は多少人の手が加わり、直されてはいるがまだ微妙に壊れてる感は拭えない。 その事務所の、古めかしい玄関の壁になぜか直に赤いペンキで、でかでかと『東部心霊探偵事務所』と妙に達筆な字で書かれていた。とにかく奇妙な家だったが住民はごく普通の、四十過ぎの髭面の気のいいおっさんだった。
今日も畑仕事に精がでる。夏に向けて植えた南瓜も西瓜も程よく順調に育っているのを、所長である武藤秀は満足気に見つめていた。