「桜杯くん?うわぁ何年ぶりかなぁ」
桜杯は武藤の大学の後輩だひさしぶりの電話越しの会合に胸が踊る。 いそいそと玄関の近くにある時代錯誤な黒電話を受け取る。
わくわくしながら耳に当てると、いきなりかすかに赤ん坊の鳴く声がした。彼は確か結婚していないはずだいやな予感はしたものの、なるだけ平静を保つ。
「もしもし?桜杯くん?」『先輩、あぁ、よかった』開口一番によかった。 武藤はすぐにぴんときた。さっき、茶髪の青年の仕事の話という言葉。そして桜杯の安堵の声。 そして、まだ、電話越しにかすかに聞こえる赤ん坊の鳴き声のような声。
武藤はなんとなく確信しながら、聞いてみた。
「桜杯くん、きみ、憑かれてるね、しかも結構力のある子に。」