数日後。まだまだ仕事が上手く行かないお玲。新参なので、先輩女中から遣い(パシり)をいつも喰らう。
ゴミを運べと言われ、お玲はしょうがなくパンパンになったゴミ袋を手に持ち、広い屋敷の裏側へと向かう。武家の娘は本来はこの様な下っぱ仕事をするはずもないのに…、とお玲は落ち込む。
その時、お玲が持っていたゴミ袋が破裂して、ゴミが地面に溢れてしまった。
「どうしよう…拾わないと…」
汚く散ったゴミをお玲は素手で拾っていく。すると、後ろから声がし、駆け寄ってくる。「大丈夫かっ！」
振り向くと、それは廣瀬家の子息、清二だった。
「あっ…」
清二は顔を赤くする。お玲をこの前、一目で惚れてしまったからだ。すると、散ったゴミをお玲と一緒になって拾い始めた。
「清二様、お手が汚れます！」
お玲は手拭いで清二の手を拭く。
「…大丈夫だから…君の…名は？」
「お玲と申します、歳は14」「…僕は15歳、君、身分は…」「武士の娘です、今は落ちぶれていますが…」「そうか…」丁度、ゴミ拾いは終わった。
「本当にありがとうございます、清二様…」「うん」そう言い清二は微笑む。お玲も親近感が湧いて、微笑み返す。
「ではまた…」
「ああ、じゃあね」
清二はお玲の頭をそっと撫でた。
これが、二人の出会いだった。
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