ある日常の二人〜春香と智明〜

ジマ  2007-06-29投稿
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「別れましょ。」
春香は水を一口飲んだ後に言った。
「私には、智明の気持ちがわからなくなったの。」
両手で包み込むように持っているグラスを見つめながら続けた。半分ぐらい入っている水が、かすかに揺れてる。

智明がどんな顔をしているかは、わからない。ただ、黙って私の言葉を聞いていた。

「ごめんね。さようなら。」
最後にそう言って、自分の分の代金を置いて立ち上がった。そのまま、智明の顔を見ないまま店を出た。










7月下旬。晴れ。
私たちは、毎週日曜日に会うことにしていた。今日は7月最後の日曜日。昨日の夜、智明から
「明日は映画に行かないか?」と、いつものそっけないメールが来た。
「いいよ。」と、そっけなく返す。
出会ったばかりのときは、智明のそっけないメールにもがんばって絵文字を使って返信していたが。いまでは、そんなことはしなくなった。


午後4時。外はジメジメしていて蒸し暑い。汗が背中をつたっていく。
駅の前で待っていると、改札から智明が出てきた。すらっとした体型で、少し長い茶色い髪を左目の上で分けながら歩いている。顔は、私が言うのも変だが、普通の顔である。特に鼻が高い訳でもないし、目が大きいということもない。
智明は、私を見つけると、少し笑って近づいて来る。
「ごめん待った?」
「ううん。全然。」
お馴染みのセリフをお互いに言ってから歩き出す。

智明はあまり話すのがうまくない。無口な方だ。だから、二人でいるときは私が話して智明が相づちをうつことが多い。
今日もそんな感じ。智明は、微笑みながら私の話に相づちをうっている。

歩いて10分ぐらいの所に映画館はある。映画館に着いたとき、私は持っていたミニタオルで汗を拭いていた。智明も暑そうに、襟元をパタパタ扇いでいた。
館内に入ると冷房が効いていて涼しかった。かいていた汗が冷えて寒いぐらいだった。

智明の見たかった映画は満席だったので、仕方なく別のにすることにした。智明がチケット売り場でチケットを2枚買った。後ろのほうで待っている私に1枚渡す。私はチケットを受け取り、代わりに1500円を智明に渡した。私たちは、誕生日などの特別な日以外はすべて割り勘にしていた。特に意味はないと思う。出会ったときからなんとなくそうなっていた。

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