呪咀をかけたのは古賀晴紀武藤の一年先輩で、サークル仲間。細身で、色を抜きすぎず、かといって濃すぎない当時としては珍しい茶髪で、ハンサムでやさしいいわゆるオールマイティーなイケメンだった。だが武藤は皆が気付かない裏の顔に気付いていた。彼は、呪咀や黒魔術を崇拝する危険な人間だということを。
『古賀さん、今は呪咀の実験してるらしくて、たまたま街で見かけた僕のゼミとってる子ひっかけて、連れ込んで、呪咀の種を植え付けたみたいなんです。僕じゃ手に負えないぐらい強力で…僕なんとかしようとしたんです。先輩の言ってたのもしてみました。でも、出来なくて、』
情けない声音。桜杯は戸惑ったように一息で言った。「わかったよ、桜杯くん。わかったから。大丈夫。すぐそっちいくからね。」