『俺、強くなるよ』
前に彼が言ってくれた言葉を思い出したのは意外にがっちりしてたから。
(着痩せするんだ…)
若干、背も伸びた彼はどんどん格好良くなってく。
と、見とれてる間に千里ちゃんも脱ぎ始めていた。
シャツから覗くピンクがかった白のビキニ。
明らかに周りの視線を感じる。
髪の毛をアップにした彼女のその姿は、白鳥を思い出させる程綺麗だった―。
「どしたの?水城ちゃん、入らないの?」
立ち尽くして身動き取れないでいた私に水嶋君が声をかけた。
だけど…
「う、うん。ちょっと気分悪くて…」
脱げる訳ない。彼女の傍で…。
「そか…。良くなったらおいで☆」
彼は声をかけてくれると、海の中へ突き進んだ。
もちろん、千里ちゃんも後を追う。
私は一人レジャーシートに座り込んでいた。
(こんな筈じゃなかったのに…)
二人が楽しそうに泳いでる姿を見て、胸が痛む。
千里ちゃんが来なければ、あそこにいたのは私だった…?
最悪…。
私、千里ちゃんに嫉妬してる。
すっごいヤなヤツだ…。
一度覆いかぶさった闇は、簡単に消えない。
黒い渦が大きくなる中で、私は藻掻き続けるしかなかったんだ―。