冬子は休暇の日数があまりに短いことに今更気付いていた。
結局、自分のやりたいことはわからず終いだった。またいつもの忙しく虚しい作業の中へと逆戻りだ。
忙殺されていればこんなバカな考えは浮かばなくてすむ。
やりたいこと。
冬子は直之がなんと言ってほしかったのかがわからなかった。
「・・・・」
冬子はいつの間にか眠ってしまった。
直之が店を閉める夕方頃には外は土砂降りの雨だった。
何とはなしに冬子に電話をかけてしまった。
「もしもし、冬子?」
「どしたの?」
「あの、俺・・・」
直之は続きがなかなか言えずに自分に苛立った。
「冬子の・・・・」
「ナッちゃん、ハッキリ言ってよ」
「俺、冬子が好きなんだ・・!え?」
電話は何故か切れていた。
どうやら冬子の携帯電話の電池切れらしかった。
また肝心なところで直之は気持ちを伝え損なってしまった。
あと一日で冬子は東京に戻っていくことを、直之は知らなかった。