『で、でも、どうやって闘うの!?』
これまでの体験が、彼女の精神的性向を少なからずリク=ウル=カルンダハラの側にねじまげてしまった様だ。
正義感や情熱ではどうにもならない、本質的構造にいち早く思いをはせたテンペ=ホイフェ=クダグニンは、途端に懸念を顔中に浮かべた。
『ああ、そうだったな』
前を向いたまま少年は、同胞の指摘を玩味してみた。
財力・武力・人員・情報・知名度・それに連中の大好きな血統に家柄―\r
どれを取っても、今の自分達に勝てそうな要素は一つも見当たらない。
おまけに、本来なら、自分等二人の共和国星民の役割を持つべき指導者連が、無知無能と来ている。
はっきり言って年端の行かないクソガキ共にここまで蹂躙されながら、おろおろするばかりなのだ。
本当に情けない。
マスコミに至っては、面白おかしく煽ろうとするだけだろう。
報道の自由の美名の下、彼等は責任を負わなくても良いし、また負うつもりも無い筈だ。
だが、それでもやらねばならない。
そんな不毛な永久凍土の中で、マエリーは逃げ出さず、誰にも糾弾される心配も無いのに、自らの意思で子供を助けたのだから―\r
こんなしょうもない環境でも、その意思、否、遺志は誰かが引き継ぐべきなのだ。
何物かの命令とか強制とかじゃなくて、非難や称讚に左右されるのでもなくて、増してや、賞罰を考えて何かじゃなくて、高邁な理念でも、勿論ない。
敢えて言えば義侠心か?
そこまで思い付いてリクは内心苦笑した。
だが、同時にその概念に別種の笑みも浮かべたのだ―余り好みでは無かったのだが、まあそれでも良いさ、と。
『策(て)は…考えるさ』
落ち着いて答えたその言葉は、控え目に放たれたフーバー=エンジェルミに対する宣戦布告だった。