航宙機動部隊第三章・17

まっかつ  2007-06-30投稿
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翌第二期二日[修正太陽暦一月七日]―\r
テロの死亡者は、最終的には一万三千名を越えた。
有史以来最悪の人災―しかも、今まで顔すら知らない筈の異邦者による身勝手な論理によって引き起こされた―に、パレオス星民は、冷静な判断力を完全に奪われたとしても、一体誰がこれを責めれようか?
しかも、その後全国、否、全銀河に向けて見せ付けられたフーバー=エンジェルミの傲慢極まる挑戦が、無力感に打ちひしがれるままの六三00万人を、怒りと憎悪に満ちた錯乱状態に陥れてしまったとしても、無理はない。
狂える太子党の総帥がそれを狙って行ったとすれば、彼の労力ないし投資は完全に報われたと評して良かった。
煮えたぎる激情の溶鉱炉と化した星民達に、最早妥協だの懐柔だの説得だのが通用する筈が無かったのである。
彼等は、あらゆる抵抗と反逆を以てこの暴挙に報いた。
この日、群衆の織り成す暴風雨はティヴィタヴェキア全星を埋め尽し、三日前の一連のデモと並んで、それはパレオス星邦の市民運動史上に金字塔を打ち立てるに値する物だった―その苛烈さ悲惨さに置いて。
一度統制を喪失した集団心理が暴走・迷走の巨大な負の磁場に絡め取られるまで、そう時間はかからなかった。
デモ行進が暴動に変質し、暴動が更なる破壊と混乱を呼び込んでは雪だるま式に膨れ上がり、あちこちで発生した衝突が、逆上と恐慌を次々と産み出した。
参加者達の心から、倫理(モラル)は早々と打ち捨てられ、そこからあらゆる道義・法律が踏みにじられるまでに指呼の間もなかった。
建物は壊され放火され、人々は水位を上げ続ける異常な恍惚に溺れ回り始めたのだ。
商品を略奪し、日頃の恨みを晴らすべく死刑(リンチ)に奔走し、富裕層の令嬢や女性タレントの一部が大勢に取り囲まれ、暴行されると言う痛ましい事件まで発生した。
挙句の果てには、彼等同士の内ゲバ合戦が、暴動を最悪の事態にまで追い込んだ。
当然政府も司法も自治体も、指をくわえて見ていた分けではない。
警官隊を中心に、併せて三0万八千人が出動し、武装車両七五00台・パトロールヘリ八00機・船舶二千隻等を配備して、事態の収拾を図ったが、概数二千万を突破する暴徒達を前にしては、焼け石に水程の効果もなかった。

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