夏目亜紗子。大学二年生の十九歳。日本文学専攻。 つい最近、街中でかっこいいおじ様に声をかけられて一晩を供にした日から、背中に奇妙な文字が無数浮かび上がってきたという。
「趣味と実用兼ねてるね」東京に向かう新幹線の中、室戸は送られてきた背中の写真とこれまでの呪咀の経緯を見ながら呟いた。
そして、前を見れば、室戸の直感をぶすくれた機嫌の悪そうな顔で聞いていた武藤がいた。室戸はため息をついた。これはフォローしなければ仕事しない。
長年の直感で察知した。 「しかたねーよ、あのバカ桜杯の世話は俺すっからよ武藤さんはこの夏目って子のやってよ。この子、被害者だろう?古賀に魅惑されて、やられて、種植え付けられた、そうだろう?」