『パレオス星邦憲法・第二八条第二項・並びに同憲法第三三条の規定に基づき、星民会議々長兼元首代行職・ペアリーノ=グイッチャルディーニ氏と彼の政権に対する不信任案及び辞任決議の要求を提出致します』
暴動鎮圧直後に緊急特別議会が、今だ破壊と戦闘の爪痕生々しいシテ中心市の議事堂に召集された。
轟々たる野次と非難のオーケストラが密度を濃縮させながら堂内に充満し、全ての遮蔽物を打ち震わせる中で、厳粛に弾劾動議が読み上げられ、それは拍手の夕立によって存分に報いられた。
第二党たる星民代議士連盟を中心に、全ての野党が大同団結を結成して、グイッチャルディーニ氏率いる与党・星民憲政党を徹底的に叩きまくる。
特に、議会内論戦の主役となり、この不信任案提出を自ら買って出た、急進改革派・社会革新同盟代表・ピエトロ=ガルバーナの活躍もしくは暗躍は、正しく水を得た魚さながらだった。
活力と戦意に満ち溢れた若手の闘志と言った風貌の持ち主で、その過激だが本質的矛盾をずばりと突いた論調は、少なからぬ顰蹙と警戒を買いもしたが、同時にそれ以上の人気と共感も得ており、比較的庶民層から高い支持を集めて、政界内でも新参かつ小兵ながら油断のならない一角を形成するのに成功していた。
一連のシナリオを描き、ここまでに至る音頭取りをしたのは彼で有った。
他により大きな勢力・重鎮をなすべき人物に野党連合側が不足していた分けではない。
ピエトロ=ガルバーナの代わりを勤めるには彼等は勇気が不足し、又、狡猾過ぎたのが主たる理由だったのだ。
質問壇に陣取り、羊毛一00パーセントの赤絨毯を踏みしめた彼は、反対側に立ったグイッチャルディーニ氏を猛烈かつ執拗に追い詰めにかかった。
『本来ならば、御自らが責任を表明し、辞任をなされるのが筋ではございませんか議長?最外縁征討軍は他ならぬ貴方が派遣を依頼した代物ですが、あれは一体何を守る為の軍隊なのです?お答え下さい』
己の壇に両手を置きながら、グイッチャルディーニ氏は自覚した。
視線と共に満場から送られて来る、敵意と反感と抗議の静かなる集中砲火を。
長い政治家人生である意味慣れ切ったシチュエーションの筈なのだが、それでも臓腑に押し寄せて来る無形の圧力は相変わらずだったし、増して今回はその質量に置いて、比較にならなかった。