カラスの天狩り 2 『カラス…?』

くろあげは  2007-07-03投稿
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普通…なら、
カラスは言葉を喋らないはずだ。
でも限に今、このカラスは喋った。
綺麗な澄んだ声で…。

しかも奇妙な言葉だ。

それが、僕がこのカラスに対して持っていた、
恐怖心を和らげた。
これはカラスじゃない、と僕は何故か確信した。

だからだろうか?
僕は問い掛けをしてしまった。
自分を殺すのか、と。


『へぇえ…、
こんな状況なのに、
俺の言葉ムシして、疑問を持たないでさぁ、
しかも、逆に質問?』


ウケるー、と言って、
カラスは笑い始めた。
人間の笑い声で。

その親しみやすい口調に、僕はさらに安堵した。

カラスは僕の上から降りて、僕の周りで、軽快にステップを踏むように跳ね回り始めた。
僕はゆっくり上半身を起こして、足を伸ばした楽な体制で座った。


…‘俺,…?
このカラス、
雄…いや、男?
しかも、けっこう若い声で…綺麗…。


僕の周りを回っている、この謎のカラスを、目で追った。

一見普通のカラスだ…。


なんなんだ?
あっ……。


《ブルッ…》
一瞬身が竦んだ。

人語を喋る普通じゃないカラス。
このカラスはもしかしたら、本当に死神の遣いなのではないかという思いがよぎったから…。

−−−怖い。


−−−−−あの、
火葬場での事がきっかけで、それから僕はカラスが恐ろしくてしょうがなくなった。

学校帰りには、
カラスが居る場所を極力避けて通るようにして、早く帰って、
夕方までには、遊んでいる途中でも帰った。
なにより、カラスが活動し始める時間には、
どんなに行かなければいけない用事があっても、絶対に出掛けなかった。

中学生になったいまでも、多少薄らいだものの、まだカラスに恐怖心を抱いている。
そして、
時折、カラスに
魂を盗られる夢をみる。

僕の胸に爪を立てて、
魂をえぐり出される。
という恐ろしい夢…。

…だから、
今日も早く帰るつもり
だった。


『怖ぁーい?』


突然カラスが、
僕の心でも見透かしたように話かけてきた。
いつの間にか左腿の上に乗っかっている。


『大丈夫。
あげるから、貰うだけ』


…へ?
意味が解らないんだけど…。



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