航宙機動部隊第三章・22

まっかつ  2007-07-04投稿
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飽くまでもそれが反対者達に限られている内ならば、まだ救い甲斐はある。
だが、普段から敵は内部にも存在するのが政界の常識とは言え、この心理的針の蓆を織り成す少なからぬ部分が、己の味方や部下達に占められているのには、百戦錬磨を誇るペアリーノ=グイッチャルディーニ氏も、ショックに憂然とさせられた事を認めなければならなかった。
彼等が野党側と心情を同じゅうするのが欲望や打算絡みでないだけに却って厄介極まるのを、老政治家は良く知っていたのだ。
『…我々を守る為で有ります』
簡潔な解答は、余計な言質を回避する、最良の方法の一つだった。
それは、非難動議とは真逆の、そして遥かに巨大な反応によって、歓迎された。
音声化された、あからさまな敵意・憎悪・拒絶の渦巻きが、星邦議長に襲い掛り、一気呵成に呑み込もうとする。
圧倒的優勢な援軍を背に、ピエトロ=ガルバーナは、その攻め手を益々強めて来た。
『ほう―あれは我々を守る為にあると、そう仰るのですか?だとしたら確かに、我が星邦有史以来最も頼りになる友軍と評すべきでしょうなあ!今しがたの暴動鎮圧戦では実に勇敢に彼等は働いてくれましたよ?僅か六時間で死者八五七三名・負傷者約二0万名・行方不明者が三八000名!正確な数値が取れる頃には、更に増えるでしょう―これは全て、パレオス星民、我等が同胞達の被害です!もう一度訊きますが、最外縁征討軍は何を守る軍隊なのですか?』
『…我々を、です』
『では、その同盟軍が何故、これだけ我が星民を殺し、傷つけ、焼き払ったのですか!?』
アジテーターめ―グイッチャルディーニ氏は内心憎々し気に罵った。
元々手強い相手とは認識していたが、どうやら世が乱れれば乱れる程に、活躍の場を掴むタイプらしい。
『暴動による民間人への被害の拡大を防ぐ為でした』
『これ程の犠牲を出したのは、その為には仕方なかったとお考えですか?』
『我が星民が不当な被害を受け、命まで落とすのならば、それが例え一人でも断腸の極みでございます。ですが、だからこそ、あの時点では何としても更に多くの人が亡くなるのを指をくわえてみている分けには参りませんでした。確かに被害や犠牲の軽減をもっと望める余地は無かったのかと、悔み切れない物がごさいますが、事態収集の為には、あれしか方策は無かったのです』



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