−−『大丈夫。
あげるから、貰うだけ』
その言葉の意味が解らず、僕は首を傾げた。
カラスが顔を近づけてきて、僕は一瞬、言い知れぬ危機感を感じて反射的に後ろにのけ反った。
いくら‘普通じゃない,カラスでも、その容姿は僕が恐れるカラスそのもの。
くちばしで突かれるのを思わず想像してしまう。
『…だから、
怖がらなくていいって…対価交換をするだけ…』
−−−対価…交換??
僕が怖がっていることを悟したのか、カラスは首を引っ込めて、躯を後退させた。
そして、先程までとは違った、落ち着いて優しい口調で囁いた。
僕はカラスの目を見た
目、が…儚げだった。
僕は何故か、罪悪感を感じて、いたたまれない気持ちになった。
わざと視線から目を逸らすように、目を伏せる。
相手はカラスだ…、
人間じゃない。
僕の大っ嫌いな カラス。
なのに、なんでこうも…不思議と普通に接することが出来るんだろう…。
なんでこうも…安心感が持てるんだろう…?
『くっ…ははは…、
さいしょ痛いけどさぁ、すぐに楽になるよ…』
カラスは羽をばたつかせて、楽しそうに笑った。
何が可笑しいのだろうか?それに、急に口調が変わった気がする…。
何か抑揚のついた、艶っぽい…怖い声に…。
『じゃ、ハズレだったら自分を恨めよ?
適合者じゃなかった、
自分が悪いんだしさぁ』
カラスが近づいて来る。
僕の目に、黒いくちばしが……
−−−−……え…?
あっ……ああ…
《ザクッ…クチャ…》
「ひっ…ぎゃあぁぁぁああああああ!!!」
僕は
喉から血がでるくらいに叫び声を上げていた。
自分のモノか?と疑うぐらいの悲痛の声だった。なんで…こんな声を上げているんだろ…?
一瞬、思考や躯が麻痺したような感覚に陥る。
でもそれは、荒波のように激しく襲い来る激痛によって、目覚めさせられた。
目が…痛いっ…!!
咄嗟に、右目を両手で押さえる。
右目に、灼熱の鉛でも押し込められているようだった。
経験したことのない苦痛。
温かいぬるっとした液体が、右目から流れる。
熱い痛い…
ち…?血…?
なんで?
どうして…?