「お邪魔しま〜す☆」
玄関で声をあげる彩。
誰もいない事を教えると、「あ…」って小さな声を出し手で口を塞ぐ。
すげーソワソワしてんのわかる。
(可愛い…)
頭を撫でて部屋に招き入れる。
「座ってな。今、飲みもん入れてくる」
「あ、ありがと」
ちょこん、と借りて来た猫みたいに座り込む彩を後に、部屋を出た。
(エロ本、置きっぱじゃなかったよな?)
お茶をグラスに注ぎながら部屋の様子を思い出す。
母親が買って来たであろうえびせんが目に入って来て、それもまた皿に移す。
「彩〜。こんなんしかないけど食うか?」
部屋の戸を開けると、デスクの前で慌てている彩。
(物色してやがったな…)
「あ、うん!食う」
嬉しそうな笑顔を見せ付けられて、あえて何も言う気になれなくなる。
「まこっちゃんがね…」
えびせん頬張りながら、喋る彩。
化粧して中一には見えないけど、やっぱ子供だな(笑)
(と言っても俺も一つしか変わらんが…)
それから特に話が弾む訳でもなく、沈黙が続く。
「お前、人の話ばっかだな」俺に言われてから気付いたのか、口を瞑る。
「だって緊張するんだもん…」
「初めてじゃないだろー、この部屋」
俺が抱えて帰った時の事だ。