ヤス#89
「これっ!泰治。もうっ!やっちゃんも真面目に考えてね」
「はい…おばさん」
バスで三十分行ったところに高峰という町がある。バス停から十分ほど歩くと川村家についた。夕食時にはまだ時間があった。
「私は夕食の準備をするわね」
「あ、おばさん。俺、手伝うよ」
「ふふっ。ありがとう。でも、良いのよ。泰治とゴロゴロしていなさい」
「いいから。手伝わせてよ」
「そう?じゃあ、ジャガイモの皮を剥いてもらおうかしら?」
「それより、その魚を捌こうか?おばさんの手が魚臭くなったらイメージが悪いよ」
「まあ、どんなイメージなのかしら?」
「うん…おばさんのイメージは大きなバラの花かな。だから、魚臭かったら駄目だね」
「まっ。流石に画家の卵ね。泰治とは頭が違うみたい。ふふっ」
ヤスは手際よく魚を三枚に下ろした。ヤスはもともと漁師だ。魚を捌く事など目を閉じていても出来る。
「まあっ!あっという間ね。流石だわ」
「おばさん、刺身?それとも…焼くの?」
「じゃあ、半分をお刺身にして、残りを焼きましょうか?」
「骨と頭は?」
「あ、そうね…どうしようかしら」
「じゃあ、俺が吸い物を作るよ」
「やっちゃんって、何でも出来ちゃうのね」