ヤス#90
「ハハハ。一人で暮らすとこれくらい覚えますよ」
「やっちゃん…」
純子はヤスの肩を抱いた。いや、正確に言えば、泰子が寄りかかったという感じだ。ヤスの方が遥かに背が高い。十八歳のヤスは一八十センチを超える。
「おばさん。やさしいしてくれて、ありがとう…でも、包丁を握っているから危ないよ…」
「あ…ごめんなさい…やっちゃん。良く頑張ってきたわね。純子さんも、きっと喜んでいるわよ。頑張って画家を目指してね」
「うん…必ず画家になってみせるよ」
「ああ…やっちゃん。抱きしめさせて」
「…おばさん」
泰治がリビングから呼んでいる。
「おーい!ヤス!ギター、ひこうぜ」
「待ってろよ!料理を作っているんだから、邪魔するなよ!」
「ふふっ。あなた達はホントに仲が良いのね」
「おばさんだって母さんと仲が良かったじゃない」
「そうね…私も親友を亡くしてつらかったわ」
「おばさん」
「なーに?やっちゃん」
「俺、おばさんが好きだよ」
「ま、ありがとう。私もやっちゃんの事、好きよ」
「ううん…そうじゃ無くて、ホントに好きだって言っているんだ」
「えっ…?どういう意味?」
「だから、そういう意味」
「