夕暮れの日に〜争いの国〜その13

グレイブ  2007-07-06投稿
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「うわぁぁぁあ」

悲鳴を上げる、目の前の男。

振り向きざま、黒い銃口が光った。

ーーーしまった。

右腕の肩から、鮮血が溢れだす。これではもう刀は握れない。

左手で腰の銃を引き抜くが、激痛と出血で標準が定まらない。
でっかの漫画みたく、上手くはいかないみたいだ。

「絶対絶命ってやつだなぁおい。」
俺に銃を向けながら、男が言い放った。

ごめんねラト。僕はここまでみたいだ。
諦めきれなかった。でも体が思うように動かない。
悔しさと、悲しみで、目から涙が溢れた。

「ぉいおい、まさか恐くて泣いてんのか?こいつぁ傑作だぜ。」

「ーーちくしょう」


僕の視界に、茶色い固まりが入り込む

そいつは音もなく着地すると、一瞬で男の首を落とした。


「なぁに暗い顔してんだ!まさか念仏でも唱えてたの?」

ーーーラト!

「ぉおい、暑苦しいぜ、やめろって。」

ラトは僕の首根っこを噛み、ラトの体から引き離した。

なにがなんだか分からない。なんで捕まってたはずのラトが、ここにいるのか。

ポケットに常備していた止血剤と鎮痛剤を肩に打ち込みながら、ラトに聞いた。

「なんで・・・・」


「私だよ。」

振り向くと、そこにいたのは、受け付けのおじさんだった。

こいつは厳しいかもしれない。

「ありがとうございます。ラトを、救出してくれて。」

そういいながら僕は、おじさんに銃を突き付けた。

「ぉいトト!なにやってんだ!」

目をそらす訳にはいかないが、ラトには右手で合図した。
「敵だ。」と。

「そんな訳ないだろう!だっておじさんは、俺を!ねぇっ、おじさん!なんか言ってよっ!」

目の前にあらわれた、初老のおじさんは、後ろに隠していた拳銃を自分の頭に当てた。

「ばれていたのなら、仕方ない。でも、一つだけ。何でわかったんだい?」

トトは黙っている。その瞳に涙を浮かべながら。

「トトの家を出た後、銃声が聞こえたんです。それで確信しました。」

「そうか。トト君、許してくれとは言わないが、私の事を忘れてくれ。私はただ、きみを独り占めにしたかったんだ。」

トトは目を閉じた。現実を、直視できないでいた。

おじさんは、静かにその引き金を引いた。

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