「うわぁぁぁあ」
悲鳴を上げる、目の前の男。
振り向きざま、黒い銃口が光った。
ーーーしまった。
右腕の肩から、鮮血が溢れだす。これではもう刀は握れない。
左手で腰の銃を引き抜くが、激痛と出血で標準が定まらない。
でっかの漫画みたく、上手くはいかないみたいだ。
「絶対絶命ってやつだなぁおい。」
俺に銃を向けながら、男が言い放った。
ごめんねラト。僕はここまでみたいだ。
諦めきれなかった。でも体が思うように動かない。
悔しさと、悲しみで、目から涙が溢れた。
「ぉいおい、まさか恐くて泣いてんのか?こいつぁ傑作だぜ。」
「ーーちくしょう」
僕の視界に、茶色い固まりが入り込む
そいつは音もなく着地すると、一瞬で男の首を落とした。
「なぁに暗い顔してんだ!まさか念仏でも唱えてたの?」
ーーーラト!
「ぉおい、暑苦しいぜ、やめろって。」
ラトは僕の首根っこを噛み、ラトの体から引き離した。
なにがなんだか分からない。なんで捕まってたはずのラトが、ここにいるのか。
ポケットに常備していた止血剤と鎮痛剤を肩に打ち込みながら、ラトに聞いた。
「なんで・・・・」
「私だよ。」
振り向くと、そこにいたのは、受け付けのおじさんだった。
こいつは厳しいかもしれない。
「ありがとうございます。ラトを、救出してくれて。」
そういいながら僕は、おじさんに銃を突き付けた。
「ぉいトト!なにやってんだ!」
目をそらす訳にはいかないが、ラトには右手で合図した。
「敵だ。」と。
「そんな訳ないだろう!だっておじさんは、俺を!ねぇっ、おじさん!なんか言ってよっ!」
目の前にあらわれた、初老のおじさんは、後ろに隠していた拳銃を自分の頭に当てた。
「ばれていたのなら、仕方ない。でも、一つだけ。何でわかったんだい?」
トトは黙っている。その瞳に涙を浮かべながら。
「トトの家を出た後、銃声が聞こえたんです。それで確信しました。」
「そうか。トト君、許してくれとは言わないが、私の事を忘れてくれ。私はただ、きみを独り占めにしたかったんだ。」
トトは目を閉じた。現実を、直視できないでいた。
おじさんは、静かにその引き金を引いた。