とにかく走った。
泣き顔を人に見られないように。
ピンポーン…。
ガチャ。
「はい」
玄関のドアを開けて、出てきたのはまこっちゃん本人だった。
「あ、彩?」
私を見て驚いてる。
多分凄い顔してたんだと思う。
「まこっちゃん…。う…うわぁあぁん!!」
私は声をあげて泣いた。
それも小学校低学年ぶりくらいに。
「ごめん…。彼氏と一緒だったのに」
彼氏が来てたのに、わざわざ帰して私を部屋にあげてくれた。
「そりゃ家の前であんだけ泣かれたらねぇ」
苦笑いのまこっちゃん。
「ごめん…。何か、まこっちゃんの顔見たら泣けて来て…」
ティッシュで思いっきり鼻を噛む。
「迷子か、そして私は母親か」と、さり気なく突っ込まれたけど。
「ま、落ち着いてから帰んな」
まこっちゃんのその言葉に甘える事にした。
私の頭の中は疑問だらけだった。
あの時、寸前で止めたのは…私に魅力がないから?それとも…。
知ってる、和也が私を通して違う誰かを見てる事。
その人がいるから?
始めのうちは隣にいられるならそれでも良いって思ってたんだ。
―でも、実際は隣にいればいる程辛くて…欲張ってしまうんだ―。