Prolog
深夜のコンビニ。街全体が眠りについている時刻。客は一人しかおらず、レジの店主らしき男が欠伸をする。
するともう一人男が入ってきた。
「いらっしゃーい…」
店主が眠そうな声を上げる。男はブルブル震えながら懐から拳銃を取り出し、店主に突きつけた。
「手ぇ上げろ!金…金だ!」
しかし店主は反応しない。男が狼狽していると、唯一の客がレジに近寄った。
「おい!うごくんじゃねぇ!」
客は強盗の方を向いた。
奇妙な男だった。顔の左半分が髪で隠され、ヨレヨレのつなぎを着た背の高い男である。
「……俺に言ってんの?」
男がポカンとした顔で答える。レジでは店主が清算し終わった商品を袋に詰めていた。
「てめぇら…命が惜しくねぇのか!」
「ウッセ…素人が」店主が呟き、レジの下からショットガンを取り出し、強盗に突きつけた。強盗の顔色が変わる。
「んな…」
凄まじい音がして強盗がその場に突っ伏した。
「チッ…不発か」
店主が残念そうにショットガンをしまう。片目の男も強盗を乗り越え、コンビニを後にした。
2022年 東京
ヒト型ロボットの開発、医療技術、治療薬の向上などの輝かしい進歩の裏で、犯罪検挙率の低下、失業などの社会不安が悪化し、東京は犯罪都市の名をほしいままにしていた…
件の片目の男が歩いている。彼は裏道に入ると、廃墟となったビルの中に入って行った。ビルの屋上には事務所のような建物が建っており、片目はその中へと入って行った。
「ただいま〜」
片目の言葉に居間で煙草を吸っていたサングラスの男が顔を上げる。
「おう、羅刹か。ちょうどよかった。仕事だ」
羅刹が片目の名前らしい。彼はいそいそと荷物を置くとサングラスに言った。
「冬彦と時雨は?起こしてくる?」
「いらん。俺達だけで十分だ」
彼らの仕事は危険が及ぶと思われる仕事を依頼者に変わって遂行する事…
その名も…危険代行業。