カラスの天狩り 4   『期待』※流血表現アリ

くろあげは  2007-07-06投稿
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頭に浮かぶのは、疑問と絶望と恐怖。

何かを裏切られたような気がして、
僕はカラスと、気を許してしまった自分と、なにもかも全てを憎んだ。
同時に、僕は自分が情けなくなった。


何を期待していたんだ?

優しそうに見えたのは、きっとニセモノなんだ。
僕を安心させるための、芝居なんだ。

カラスなんだよ…

しかも人語を喋る、普通じゃない…そう…−−−死神の遣いなんだ…。
こいつは‘死神の遣い,
僕の命を盗りに来た…。
絶対 そうだ。
そうなんだ。

だからさ…−−−

苦しいから、辛いから、悲しいから、嫌だから、考えんの止めよう…。

もしかしたらこれは全部ウソで、夢なんだと……否定するなよ…。

カラスに、期待や希望とか未練なんて残すなよ。ただ逃れたいだけじゃないかよ、この絶望から。

こんなの、苦しいから。

なのに……、

なんで 僕は……。



泣けてきた。
でも、涙は出なかった。


「……ぅ…あ…ぁ…」


声が掠れてきた。
喉が痛い。
そして熱くて気持ち悪くて、締め付けられているような圧迫感がする。

もう、声は出ないような気がした。

僕は口をつぐみ、下唇を強く噛み締める。
痛みに感覚を犯されているのか、頭が朦朧としている。けど、耐え切れない不安が渦巻いていた。僕はどうなっているのかと、今のこの状況と現実を理解ぐらいしておきたくて、左目で自分を確かめた。

そして、
絶望が確信へと変わった

右目から流れ出る、どろりとした鮮血は、押さえ付ける両手と頬を伝い、僕の体と服を紅く染めていた。

これは現実だと、
理性が認めたような気がした。
そして安堵した。
自分はまだ生きている。

不意に押し止めていた激情が溢れ出したようで、左目が潤み、涙が出てきた。

視界がかすむ。

瞼を閉じて、虚ろいで。痛みから解放されたい気分になった。


−−−あの…カラスは?


姿は見えなかった。
有り難かったけど、何故か悲しかった。


『−−逝くなよ?
死なれたら、困るし』


あのカラスの声がして、僕は咄嗟に目を向けた。

目の前に、
黒紫色の短い髪の、
僕と同年代くらいの少年が立っていた……。

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