駅のホームは広い。地元の駅とは比較にならないほどである。東京は通過するに過ぎないのに、何か期待している。駅の看板が見えなくなるまでの一分間。
居眠りしていたら着いた、目的地。駅の外はなんだか別世界の気がしてならなかった。携帯をとり、電話して応援を呼んだ。すぐには来ないで欲しい。
案外時間が経っていた。地元からとんでもなく離れた学校を選んだ。理由があってそうした。中学の頃の顔をもう一度みたかった。上手く事が運ぶなら、メールで打った冗談のようになりたい。
怖かったというのは相手の反応だった。ばっかみたいと言われたけれど、本気になったら目的地に着いていた。遠くから見えない姿を想像するが、人通りも完全になくなった。駅は駅員と一人しかおらず、空っぽの水槽だった。あまりに心が落ち着かなくて泣きそうになる。
「十秒でいいから我慢して」言葉は決めていた。メールを交わしながら、人目惚れの威力を知った。だんだん関係が近づくにつれて。改札に右往左往する人がいた。
「十秒でいいから…」復唱する言葉が詰まりかけたとき、作者の計らいなのか、抱きついてきた。「十秒じゃ…ヤダ」
そして、東京駅を通り過ぎ、目的地へ向けて目を開いた。