美紀先輩と初めて関係を持ったのは、俺が二年に上がる前で先輩が卒業した後だった。
いきなり呼び出されて先輩の家の近くまで行った。
先輩は目を腫らした後で、何も言わずに俺の手をとって歩いた。
着いた所はまさにラブホで、始めは躊躇してた俺も先輩の『しよ?』って一言につられて童貞を捨てたんだ。
それまで告白した事はなかったけど多分、俺の気持ちに気付いてたからなんだろうな。
それからだ、何度か会って体重ねるようになったのは…。
「久しぶりだね、真鍋」
部室のドアを開けると、部長である大田先輩が怪訝な面持ちで振り返った。
「ですね…」
あの日からすでに、四日が経ってる。
何となく気が重くて、ここに顔を出さなかった。
それまでに彩の姿を見る事もなく、電話やメールも来なければする事も出来ずにいた訳だ。
他の先輩にも頭を下げて席に向う俺を大田先輩が引き止めた。
「それと…これ」
目の前に出された封筒を手にする。
《退部届》と書かれたそれを持ったまま、
「なんすか?これ」
見上げる俺に大田先輩は言った。
「彩のだよ」
(は…?)
中身を確認して無言になる。
―アイツの字だ、間違いない。