ヤス#93
｢泰治は知っているの？｣
｢ううん。あの子には何も話していないわ…でも、その時が来れば泰治もやっちゃんの力になってくれると思うの。ああ見えても度胸は据わっている子よ｣
｢うん…それは分かるよ。でも…｣
｢でも…？でも…何？｣｢命を落とすかもしれないよ。そんな目にはあわせたく無い｣
｢言ったでしょう？純子さんから全てを聞いた時…思ったの。定めなんだって…私と泰治の定め｣
ヤスの鼻先に甘く熱い吐息がかかる。ヤスは泰子の瞳をじっと見つめた。
｢捧げるわよ…やっちゃんに、この命｣
｢どうして…そこまで｣｢愛して…愛しているからよ｣
｢泰子おばさ…うっ｣
泰子が突然ヤスの唇を奪った。甘い液体を口の中に流し込みながら、ヤスにおおいかぶさってきた。ヤスは一瞬、シットを思い出した。
まさか！…と思った。ヤスは泰子を押しのけるとポケットから包みを出した。
｢おばさん、これを見て｣
｢何？…まあ！綺麗…キラキラと輝いて…自ら光を放っているみたいね…ダイヤモンド？｣
ヤスは泰子の反応を見た。手のひらで輝くアイノツブテの光が泰子の美しい瞳に反射している。瞳が赤く輝いた。ヤスには見えた。泰子の純粋な心の奥が見えた気がした。
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