九回裏ノーアウト、ランナー満塁。バッターは一番だ。キーン。乾いた金属音を残して打球はレフトの前に落ちた。歓声が上がり、三塁ランナーはホームに生還。これで4対6の二点差だ。 そして僕はベンチを立ち、ネクストサークルに準備をした。そしてバッターは二番。今度は鈍い音が聞こえ打球はショートに転がった。ショートがセカンドにボールを送る、アウト。そしてセカンドからファーストに送られ、アウト。これでツーアウト。ついに追い込まれた。ゲッツーを取られる間に三塁ランナーがホームへ生還。これで5対6の一点差。ツーアウトながらランナー三塁。そして僕は決戦のバッターボックスに向けて歩きだす。僕の名前がウグイス嬢によってコールされ、応援団の声にも力が入る。ウグイス嬢の声の余韻と応援団の声が交ざりあう中、僕はバッターボックスに立った。 九回裏ツーアウト、ランナー三塁。バッターボックスに立ち、深く息を吐いた。応援団の声が不思議と静かに聞こえた。ピッチャーがキャッチャーのサインにうなずき、第一球目。ボール。審判の低い声が聞こえた。アウトコース低めのストレートだった。そして二球目は変化球、僕のバットは空を切った。これでワンストライクワンボール。 そして三球目。インコースのストレート。鈍い音が球場内に響いた。ショートの深いところに飛んでいった打球をショートが取り一塁に投げる。僕は懸命に走り、一塁ベースに頭から飛び込んだ。 球場が静まり返り、僕はあの声を聞いた。 ?へつづく。