「どうしたの?」
怒った顔の姉を見咎めて、ウリューゼアは問い掛けた。
「どうしたの?じゃないわよ。この娘は…心配するでしょう。帰ってきたはずなのに、顔もみせないなんて、何かあったのかと思うじゃない」
姉は腰に手を当てて言った。
「ごめんなさい。
これを神殿に取りに行っていたから……」
ウリューゼアは手にしていた宝剣を姉に見せた。
「…仕方のない娘。でも、この宝剣にはあなたの命を守ってもらわなくちゃいけないから…私の代わりにね」
「…姉様……」
姉の言いようにウリューゼアは不安げに呟いた。
「今日は調子は良いのよ。あなたが久しぶりに帰って来たからかしら」
嬉しそうに言う、その姿は消え入りそうな不安感を抱かせた。
姉のエリシアの髪は金朱色で紅い国特有の短命を示す。原因不明の病である。
城や神殿がつくる結界の中以外では生きられない。しかしそれも、寿命を少しのばすくらいでしかなかった。
『私はこれで良かったのよ』
エリシアは決まって微笑を浮かべて、ウリューゼアに答えるのだった。
明日、命が尽きてしまうかもしれない恐怖を彼女は微塵も見せはしなかった。
ウリューゼアも努めて笑顔で接した。