俺はアイツを心の部屋に閉じ込めたままカヨとの日々を過ごした。
仕事も金もアイツの一番大事にする彼女も…アイツが作り上げてきたモノを奪った。
俺はそれに少し満足していた。
俺はアイツを恨んでいたんだってその時知ったんだ。
「ごめん!待った?」
「あぁ。待った」
渋谷駅前。
仕事後はいつもここで待ち合わせをする。
欲望を抑えられず、カヨの腰をグイッと引き寄せ深いキスをする。
街を行き交う人がチラチラ俺らを見る。
「…もう…」
「我慢できなくて」
今すぐにでも欲しい。
手を繋いだりハグしたり…それだけじゃ足りなくなっていた。
家に帰るなり頭をよぎるのはそこになってた。
「…いっ…たい…」
そうカヨが痛みに顔を歪めでもって俺は求め続けていた。
「ごめん…」
一段落つき、ベッドで横になりタバコに火をつけた。
月明かりにカヨの体が照らされまたムラっと欲情していく自分に気付いた。
「…ホムラはどうしてるの?」
カヨの質問に胸が締め付けられながらも何故か怒りを覚えていた。
「心の中にいる…」
「…出てこないの?」
そんな一言に俺は何かがプツリと切れたような気がした。
「気になるのかよ…」
「…うん」
俺はベッドから出て風呂場に向かった。
何でこんなに苛ついてるんだ?
俺は確かあの時に“2番目でもいい”って言ったのに。
今更になって1番になりたいなんて思い始めていた。
シャワーに打たれているときだった。
激しい頭痛に襲われそのまま意識を失った。
気付いた時には、薄暗い部屋の中にいた。
誰もいない…
ただ広い部屋にいた。
「…っのやろっ…」
俺はあの激しい頭痛と同時にホムラとスイッチしてしまったらしい。
上を見上げれば面でカヨが笑う顔が見えた。
「みんなアイツがいいってやつかよ…」
俺は卑屈にしか走れなくなっていた。
悔しくて悔しくて仕方なかった…
「カヨ…」
また一つホムラに対する恨みが増えたような気がした。