「王子…?」
「由香…だったな?
俺に逢いたかっただろうから来てやったぞ。」
由香は目を丸くした。
まあ…もう一度逢いたいとは思っていたけど、
すごい自信だ。
由香の驚いた様子を楽しみながら、王子はショウケースに並ぶ和菓子を指さした。
「これと、これ…。
それからこの赤いやつ。」
「え…?」
由香が状況を呑み込めずにいると、王子の傍にいたリュクスが説明した。
「コホン、王子はここにあるお菓子をご所望です。
由香…さんも同じお菓子の香りがすると…。」
「え…香り…!?あたしの匂い?」
王子は由香の傍に来ると必ず「匂う」と言っていた。
由香はお菓子の匂いとは思っていなかったけれど。
王子の言う「匂い」とは、お菓子の事だったんだ。
涼しげな虹色の飴細工がのった羊羹、
淡いピンクの生地の中にきめ細かな餡が詰まった練りきり、
トマトのように赤くて瑞々しいゼリー。
王子は抹茶とそれらのお菓子をはしゃぐ子供のように堪能していた。
あまりに楽しそうだったので、見ている由香まで食べたくなった。
「王子は甘いものに目がないのです。」
リュクスは溜め息をつく。