君との時間-?

DAI  2007-07-14投稿
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眩しいながら目を開けると、
誰かがペンライトで僕の目を照らしていた。
僕の周りには、両親や兄弟が涙ぐみだから僕を見ている。







母さんが僕に抱きつき、涙しながら「意識が戻って良かった…
あんたまで死んでしまうのかと思ったよ…」と喚いてきた。


(「あんたまで?」)…


そのとき僕の頭の中で、全てが合致してしまった。



「○○は?」
僕はベッドから起き上がろうとした。でも全身に激痛が走り、起き上がるどころか、腕を上げることすらできなかった。

必死で起き上がろうとする僕を先生は押さえ付け

「○○さんはつい先ほど、眠るように息をひきとりました」と言った。
先生は続けて「○○さんは、この一週間ずっとこの花を握りしめながら病気と闘っていましたよ」と言い、僕にその花を差し出した。


それはファミレスで僕の隣に置いてあった花束だった。

僕は彼女を失った何とも言えない悲しさと、今すぐにでも駆け付けたいのに動かない自分の体の惨めさに泣き崩れた。



彼女は不治の難病を患っていた。ここ数年病状が悪化し、入退院を繰り返していたのだ。



後から聞いた話によると、
僕は彼女の様態が悪化したのを聞き、バイクで駆け付ける途中、飛び出して来た自転車を避けて転倒し、一週間ほど意識を戻さず生死をさ迷っていたらしい。
笑えることに、彼女の元気付けの為に買った花を転倒の際に無意識に守っていたらしい。

ファミレスで最後一瞬悲しい顔をしたとき、別れの時だったからなんだと今になって理解できた。


僕も彼女も一週間意識がなかったけれど、心は一週間ずっと一緒にいられたような気がした。

最後声が出ないほど苦しいのにも関わらず、笑顔で『ありがとう』と言ってくれた彼女の笑顔を僕は忘れない。



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