「徳本さんは?徳本さんがいないぞ!」
辺りを見回しても、コンクリートの壁と、床の上に不自然に置かれたいすのほかには何も見あたらない。
すると、カツン、カツンという足音と共に、一人の女が牢屋の前に現れた。とても美しい、長い黒髪を持っているが、見たこともない、不気味な面を付けている。
「おい!なんだお前!なんで俺たちを…」
縄で手足を縛られながらも、女の正面まで芋虫のように這っていった井上が、鉄格子に身体を打ちつけながら言った。しかし、言い終わる前に、井上の身体は硬直してしまった…
「おっさん…」
井上の声は震えていた。まっすぐ女の顔を見て、固まっている。
「どうした井上!?」
三上の問いかけにも、井上は全く反応せず、ただ震えている…
すると、女がおもむろに仮面を剥いだ。仮面の下の顔は、まるで能面のように薄気味悪い顔だ。
女は仮面を牢屋の中に放り込んだ。仮面には色とりどりの装飾がなされている。だが、どこかおかしい…井上は、それに気付いているようだ…
「…おっさんだ…」
「は?」
「その面、おっさんの顔の皮で作られてんだよ!正面から見りゃわかる!…おっさん顔の皮を剥がされて殺されたんだ!」