猿も木から落ちるし、犬だって棒にあたる。
僕が失恋するごとだってあるさ。世界は恋愛で出来ているとはいわないが未練は捨てられない。
僕は彼女と別れてから芋虫のように布団に丸まっていた。大学にも行かずバイトもさぼっていた。つまり落ち込んでいた。涙も枯れ果てた。
トントン、安アパートとドアを叩く音がする。
無視する。
トントン。執拗にでも丁寧にドアを叩く。
ドアを開けて立っていたのはうさぎだった。二本足で立つうさぎだ。
「いやーどうも、うさぎです」お茶でも出しますか?やっぱりやめた。
「うさぎが僕になんの用ですか?」
「あなたは選ばれたのです。なんでも願いをかなえてあげましょう」
なんで?僕?
なんでもって、このうさぎは魔法使い?僕の頭はハテナマークでいっぱいだった。
「どうぞ、望みを聞かせてください」
僕の、僕の、望みは彼女とよりを戻すことだけど…なんとなく、それを言えずにいる。
「さぁ望みを!」
「僕の望みは…彼女が一生幸せに暮らすことだ!」
「その願い確かに受け取りました
うさぎが帰ってから僕は布団をたたみ、掃除機をかけた。明日からは大学にもバイトにも行こう。パスタを茹でた。そのパスタが辛くて少し泣いた。
終わり