航宙機動部隊第三章・28

まっかつ  2007-07-15投稿
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『これは一体…どう言う事なの!?』
【パレオス中央通信】人権・社会部記者、ジョヴァンナ=バウセメロは、怒声混じりの悲鳴を上げた。
あのオストレスタジアム核地雷テロを現地レポした中堅ジャーナリストだ。
それ以来休む間もなく、被害者の取材から大暴動の報道、資料収集に関係者達のインタビューと、文字通りティヴィタヴェキア中を飛び回り、へとへとになった体を引き擦りながら、すっかり暗くなったシテ中央市のオフィスに戻って来た途端、この実に馬鹿馬鹿しくも深刻極まるメディア業界の変質振りを知らされたのだ。
『ローカルネッツは、徒に社会の混乱を招く様な番組や表現を慎み、飽くまでも真実のみを公平な立場から報道すると、業界内協定を結んだ筈なのに!』
そう、それまでパレオスメディアは政府に要請されるまでもなく、かなり高いモラリティを発揮して、自制これ勉めて来ていたのだ。
『それに、何なのよ、これ!核地雷テロの被害者・遺族達と、警備体制や政府の不手際を取材したドキュメンタリーが』
彼女を一番失望と憤慨の火山口に追いやったのは、本来なら自分に与えられた放送枠のすり替え所では済まされない内容変更だった。
『何だってフーバー=エンジェルミと被害者達の生対談になってるのよ!!』
ジョヴァンナ=バウセメロは当てがわれたデスクから欺瞞と作為に満ちた企画書を掴み上げ、怒りに任せて力一杯グレーのカーペットに投げ付けた。
そして、やるせなさを自嘲気味の笑みに載せた。
『普段から生意気だったからね私は…いよいよ鬱陶しくなった会社からの形を変えた退職勧告かしら』
『僕に聞かれても分からないよ』
そこへ、同僚記者の一人イェンセがアイスコーヒーの入った断熱セルカップを二つ持って来た。
『それに―君だけじゃないぜ?突然の方針転換に現場はどこも大混乱さ―あそこを見ろよ』
彼女に一つ渡して、その隣に立ちながら、彼は向かってフロア左隅の一角に向けて顎をしゃくって見せた。
そこには、今まで無かった位置に多機能デスクが置かれ、これも今まで見掛け無かった顔が両足をボードに載せた上、両手は頭の後に回しながらふんぞり反り、しかも、左右にはサングラスをかけた黒ずくめの男を従えて、仕事場の様子を監視させている感じだった。

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