目眩の中の世界

 2007-07-15投稿
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僕の名前はサトシ。地元の大学に通う3年生だ。今日もまたいつもの様にウルサイ目覚まし時計に起こされ、いつもの様につまらない授業が終わり、またいつもの様に家路につくためバスを待っていた。
と、その時向こう側から笑顔で僕の方へ近づいてくる人影が目に入った。「サトシ−!」
そう言って向こう側から近づいてくるのは僕の数少ない友達の一人、リュウイチだ。
「リュウイチ、久しぶり」
リュウイチとは授業が違うから会うことはほとんどない。
「久しぶり!今日4限休講だったから!」
−別に理由なんか聞いてねーよ…。
そんな事を思いながらいつもの様にまた適当に話しを合わす。
「あっ、そうそう今日佐々木が授業中に鼻血だしやがってさ〜、マジウケたよ〜、あっお前佐々木しらねーか!ごめんな!ハハッ!」
−知るわけねーだろ。友達お前しかいねーんだよ。
とそんな事を思いながらまた適当な返事を返そうとした時、僕は、急に激しい目眩に襲われた。
−やべ…またか。
「どうしたサトシ?」
普通ならこういう時、気にかけてくれる友達に感謝の言葉の一つでもかけるんだろうけど、この時僕はこの目眩にただ身をまかせていた。
−どうせまたあの世界に行くんだろ。
そう思いながら段々と薄れていくリュウイチの声をまるでBGMの様にただ聞いていた。
僕は物心ついた頃からこの奇妙な現象につきまとわれていた。イキナリ激しい目眩がして、それから意識が遠退き、そして奇妙な世界へ迷い込む。その世界ではいつも僕は一人だった。ただ時間と場所だけは前の世界と同じだった。自分の周りにいた全ての人が時間だけを残して消えてしまうのである。そしてまるで今までの事が夢だったかの様に自分のベッドで目をさます。そしてその奇妙な世界に行く前後で僕を含めて僕に関わる全ての人が僕に関する記憶が曖昧なものとなっていた。
こんな事が日常的に繰り返されてきたから今、自分に起きてる事もいつもとなんら変わらない出来事のはずだった。
でも今回だけはちがっていた。
その奇妙な世界に僕以外の人物がいたのだ。いや正確には人とはわからない。ただぼんやりと遠くで人影が見えた。
−誰だ?
僕は確かめるためにそいつに近づいていき、そして段々と姿がはっきりしてきた。
「なんだよ…あれ…」
そいつは人じゃなかった。

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