綾加はいつもきれいだった。
ちょっと作り物みたいにも見える白い顔。
黒くてさらさらの髪。
長くてしなやかな指に
モデル並みのスタイル。
そして茶色のビー玉みたいなくりくりした目。
綾加はいつもきれいだった。
「綾加、おはよう。」
「おはよう。」
誰に話しかけられても誰にでも平等に接する綾加は
愛され可愛がられ大切にされ・・・・
「あ・・・。」
疎まれた。
憎まれた。
「靴、ないの?」
「うん。」
そういって綾加は客人用のスリッパをとりに行く。
ひたひたと白靴下を履いた足がすすんでいく。
「大丈夫?」
「うん。」
にっこり微笑んで綾加は言う。
「いちいち気にしてられないよ。」
そのとおりだった。
靴は3日に1回はなくなるし
教科書もほぼ毎日破かれるし
机は1週間で落書きだらけになる。
だから綾加はなれていた。
そしてわかっていた。
自分が少し周りと違うことを。
自分が少し特別だということを。
「ねぇ、綾加なんでも言ってよ。力になりたいし。」
「うん。恵美ちゃんありがとう。」
そういって風のように綾加は消えていった。
私はわかっていた。
綾加は誰からも愛され可愛がられ大切にされるけど
誰のこともそんなふうに思ってなんかいない。
利用できるものは利用する。
使えないものは切り捨てる。
それでも私は綾加が大好きだ。
だからわかっていた。
私は綾加を憎んでる。
こんなこと毎日してても無意味なのもわかってる。
靴かくして教科書破いて机を汚す。
同じ気持ちを抱いている子と一緒に
毎日そんなことしてたって意味がないのはわかってる。
嫌われるんだって良くわかってるんだ。
だけど、やめられない。
私はただ綾加の特別になりたかった。
それだけなんだ。